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この文章には、1Q84 Book1,2およびBook3の目次レベルのネタバレを含みます。
 今後先入観なしで読みたい人は、ブラウザを閉じて、この分厚い本をめくり始める事をお勧めします。

1Q84 BOOK 31Q84 BOOK 3
(2010/04/16)
村上 春樹

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本を100円で裁断してスキャンしますの説明


 また、この文章を読む前に、私が以前書いたこの文章を読む事をお勧めします。

1Q84の前に 村上春樹エルサレム賞受賞スピーチ


1Q84 BOOK1-2 制御不能なシステムの中で、自分の居場所を求めて歩き出した卵の物語

 それでは、本編をドウゾ。(本編だけでも理解できるように書いたつもりです)

 1Q84は、社会のシステムに個人が立ち向かって行く話です。
 
「テレビを持っている人はNHKに受信料を払わなくてはならない」という
日本国という社会が作ったシステムを守るため、日々いろいろな家庭のドアをノックし続けたNHK受信料集金人である父親に育てられた大吾。

「世界人類が平和に暮らすためには、人類全てが神を信じなくてはならない」という
宗教団体という社会が作ったシステムを守るため、日々いろいろな家庭のドアをノックし続けた信者兼宣教師である母親に育てられた青豆。

 この二人は、幼少のころシステムに捕らえられていたため、心(特に性癖)に大きな病理を抱えています。

 しかし、彼らの心の奥底には、まさにシステムに捕らえられていた小学生の頃、たった一度、お互いに声をかけあった思い出が残っていました。
 システムの中で生存するために押し殺していた自分の心。しかし、この時だけは、自分の心が「嬉しい」と感じた瞬間だったわけです。

 そして、アラサーになった1984年。二人が、社会のシステムからちょっとずれた1Q84年に迷い込んだところで、この小さな思い出が彼らの心を支配し、感情の赴くままに行動することを決意させるのです。

 青豆を求め続ける大吾に対し、Book2の終わりに、「自分が死ねば、大吾は助かる」という結論に陥り、口の中に拳銃を突きつける青豆。
 システムに自らの命をささげる事で、大切な人を救うことが出来る。

 これは、世のお父さんたちが過労死するまでサービス残業をし続ける事に非常に似ています。
 それと同時に、多くの人たちがこのようにシステムにその身を心をささげる事で、システムはより強固になっていく事も案じさせます。

 この選択は明らかに間違いであるにもかかわらず、彼女は引き金に力を込めます。

 理不尽なシステムというものは自分の外にあるシステムにだけあるわけではなく、外にあるシステムによって影響を受ける自分の心にも存在しているわけです。

 しかし、青豆は生きる事を選択します。
 book2で完結していれば、「どちらの生き方も正解だよ」というメッセージになったと思うのですが、book3が出た事で、「自分の感情の肯定」を正とするメッセージに変わりました。

 この「システム」というもの。
 book1,2の書評にも「悪の大王のような単純なものではない」と書きましたが、このくだりでその複雑さがより詳細に描かれています。

 NHK集金人の大吾の父親は、何の迷いもなくドンドンと見ず知らずの人のドアを叩き、ドアの前で大声を出して住人をなじります。
 彼には罪悪感などもちろんなく、むしろ使命感を感じていることでしょう。

「テレビを持っている人はNHKに受信料を払わなくてはならない」
 というシステムは、元々は日本国いう組織が作ったものですが、大吾の父親のような人間をたくさん生み出すことによって、その人間がより強固に作り出していく物なのです。

 エルサレムスピーチで、村上春樹は、システムを「壁」、人を「卵」に例えましたが、青豆が拳銃を口に突っ込んだところは、まさに「壁」にぶつかって割れる「卵」の描写です。

 そして、「壁」は実は「壁にぶつかって割れた卵」によってより強固になっていくのです。

 理想を求めて政治家になるためには、たくさんの票を獲得しなくてはならない。
 たくさんの得票をするには、理想とは程遠い、「税金を国民にばら撒く政策」を提唱しなくてはならない。

 利益を求めてFX会社を経営していくためには、たくさんの顧客を獲得しなければならない。
 たくさんの顧客を獲得するには、利益を削って、「金を顧客にばら撒くキャンペーン」を開催しなくてはならない。
クリック証券に関しては、トータルで利益になれば全く問題ないですけど)

 このように、ある方向に進んでいくためには、時に真逆の行動をしなくてはならないことがあります。
 そして、その「真逆の行動をしなくてはならない」という事自体がシステムであり、良かれと思ってやっている事が、自分たちを苦しめる結果となるわけです。

 1Q84 book3の中で、大吾と青豆は、システムとは逆方向に、自分たちの感情の赴くままに冒険を進めていきます。
 
 論理的な思考と、冷静な判断力を持っているにも関わらず、幼き頃にシステムで受けた傷から健全ではない行動をしてくすぶっていた二人が、1Q84年の世界の中で、傷を乗り越え、壁を乗り越え、システムを乗り越えて、自分を取り戻して行く話。

 高度資本主義社会というシステムに軋みが出てきた世界。
 総中流、終身雇用、年功序列といったシステムが完全に壊れてきた日本。

 そんな2010年の心に明かりを灯してくれる、素晴らしい小説です。


 
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