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 プレシャス PRECIOUS 宝物
 という名前の女性が主人公の映画。

プレシャス


 舞台は1979年のニューヨーク。ハーレム地区。
 当時治安が悪かったニューヨークの中で、ブロンクス、クイーンズと並んで、スラム化していた地域。

 プレシャスの外見を、有名人に例えると、小錦。
 ものすごくデブの黒人です。

 彼女は母親と二人暮らし。社会保障で生きている。
 父親は失踪中。

 薄暗い部屋で気持ち悪い油まみれの食べ物を食らうデブ母娘。

 母親は、娘をののしり続けます。
 料理が不味いこと。
 どうせ学校に行っても、頭は良くならないこと。
 旦那を奪ったこと。
 旦那との一人目の子供がダウン症なこと。
 そして、旦那の二人目の子供を身ごもっていること。

 プレシャスの心に、父親からレイプされている光景がフラッシュバックされます。

 ここまで、10分。

 映画を観ている私が、あまりの凄絶さに失神しそうになります。

 それは、プレシャスも同じ。いや、もっとひどい。
 そして、プレシャスの心は妄想の世界に飛んでいきます。

 ウーピーゴールドバーグのような美しい衣装を着て、レッドカーペットを歩くプレシャス。
 窓の下をのぞけば、白人の男がバイクに乗ってプレシャスを待っている。

 字が読めないので本も読めず、人生に絶望しているので教室でも一番後ろの席で何も出来ず、あまりにも悲惨なので現実を観ることも出来ないプレシャスの妄想の中の輝かしい世界は、そのギャップが故にあまりにも哀しく、切ないモノです。

 その悲惨さは、ケータイ小説のような無理矢理悲劇をつなげたモノでもなく、金八先生のような無理矢理いい話にするモノでもなく、リアルで、手のつけようがなく、どこまでも深く多層的です。

 それは、この話の作者が、NYで、プレシャスの様な人々と接してきた人だからです。


 妊娠が原因で学校をクビになった彼女は、代替学校に行くことになります。
 そして、そこで出会った美人の黒人の先生。
 彼女から、字を教わり、文章を書くことを教わり、優しさを教わります。
 
 そして、二度目の出産。

 この中で、少しずつ人間性を取り戻す姿。
 最悪の場所から脱出し、自分が生きている理由を見つけ、歩き始める姿。

 彼女が妄想の中で逃げ込むきらびやかな世界とは大きく違っていますが、素晴らしい世界です。

 たぶん、彼女は、アメリカや日本でいうところの、下流社会の人間でしょう。
 それは、最低の世界で暮らしている間も、生きる希望を見いだした後も。

 生活保護の世話になり、汚い部屋に住み、収入もなく子供が二人のシングルマザー。

 その状況説明通り悲惨な姿と、その状況とは逆にしっかりと生きる姿。

 貧乏にもいろいろな種類があり、悲惨の極地からも、ちょっとした出会いや、ちょっとした学びで、生きる希望を見いだせる。

 明らかに、ものすごく、重くて、暗い映画なのに、すがすがしい気分になれる映画なのです。
 これから貧しくなっていく日本に必要なのは、ケータイ小説ではなく、コレだと思います。

 そして・・・さらに幸せになっていくプレシャスの姿を追いかけたいのですが、彼女に与えられた運命はさらに悲惨の極地に突き落とされます。

 その、あまりの悲惨さは。。。この映画を観る予定のない人は、「続きを読む」で確認してください。

 生きていくことの辛さと、それでも生きていける強さ。

 多くの映画の中で普遍的に語られているものですが、そのリアルさと凄絶さで、このプレシャスは群を抜いている気がします。

 東京で2館しか上映していないのは、本当に惜しい。
 是非皆さんに観て欲しい一作です。

プレシャス (河出文庫)プレシャス (河出文庫)
(2010/04/10)
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プレシャスの悲劇。
 物語終盤。
 母親がプレシャスに伝えます。
「あなたの父親が死んだ。エイズだったの」
「母さんは感染していないの?」
「ケツでヤってないから大丈夫。」

 無知により、無造作に、死のウィルスが広まっていくニューヨークのスラム。
 しかし、これは現実である。

 現在、エイズ感染率が最も高い南アフリカの大統領の言葉。
 
南アフリカ:婚外子騒動の大統領「HIV陰性」

 ズマ大統領については今年に入り、3人の妻以外の女性との間に昨年10月、20人目となる子どもができていたことが発覚。また、05年にHIVに感染した女性への性的暴行罪で起訴(06年に無罪)された際、公判で避妊具を使わず性交渉したが「HIV感染の可能性を抑えるため、交渉後にシャワーを浴びた」と発言し、批判を浴びた。

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