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1Q84 村上春樹
1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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※この文章には、「システム」とか「壁」とか訳のわからないキーワードが散らばってます。
 村上春樹的「システム」の意味がわからない人は、まず、前回の文章をお読みください。

1Q84の前に 村上春樹エルサレム賞受賞スピーチ
 
 あと、多少のネタバレは含みますが、核心には触れないようにしているので、読了前の人もご安心してお読みください。(完全に前提知識なしで読みたいってひとは、もうすでに読んでるだろうし・・・)


 1Q84。
 この物語は、1984年に生活をしていた女性が、いつの間にか違う時間の流れの世界に踏み込んでしまうお話です。
 その1984年に似て非なる世界を、「1Q84年」と名付けるところから来ています。

 しかし、「9」を「きゅう」と読むから「Q」と同じ発音なのは日本だけのはずなので、英語とか韓国語とか中国語に翻訳するときはどうするんでしょう?
 ま、たぶん注釈がはいるだけだから、どうでもいいですが。

 物語は、一章ごと交互に二人の主人公の視点で描かれます。
 
 青豆さんという女性と、天吾くんという男性。
 どっちもアラサーです。

 この二人を含めた多くの登場人物は、幼少の頃に「システム」によって心に傷を負っています。
 
 NHKの集金人である父親と一緒に集金に行かされるのが何よりもいやだった天吾。
 宗教の信者であった母親と一緒に布教にいかされるのが何よりもいやだった青豆。

 親戚中警察官ばかりでひどい虐待を受けてた女性。新興宗教のコミューン(自治区)のなかで宗教行事と虐待の中間のような状況に置かれていた女の子。

「システム」として強固に固まっている、「国家」と「宗教」によっていろいろなものを絡め取られた「卵」たち。
 これが、この「1Q84」に出てくる人物たちです。

 そのからめとられた様は、彼らの恋愛観に色濃く表れており、
 (射精のタイミング以外)なにひとつ干渉しない、年上の人妻」と週に一度の逢瀬を続ける天吾。
 時々、見ず知らずの、頭の毛が薄い中年の男を捜しに、六本木のバーに行き、一夜限りの関係を求める青豆
 と、かなり病んだ精神状態の二人が、病んでいるそぶりを見せず、むしろ非常に明確かつ論理的な思考を持っている人として、描かれているのです。

 日本国民としてNHKの受信料を支払うのが常識であるように、
 世界平和のために、共に神に祈りを捧げる人を一人でも増やすため、無償の活動をするのが常識であるように、
 妊娠中の女性が亡くなったとき、その亡骸は火葬することもなくガンジス川に流すのが常識であるように。
 仕事が時間内に終わらなかったら、残業代が出なくてもその仕事を終わらせなくてはならないのが常識であるように。

 世の中には、多種多様の「常識」という名の「システム」があります。
 その「システム」は、人々を幸せにしたり、苦しめたりしています。

 また、子供のころ「システム」によってゆがめられた彼らの感情は、二人の聡明さもあって、自分たちの中に世の中の大多数の人とはちがった「システム」を生み出しているのです。

 では、彼らが組み込まれていた「システム」を作った人たちはどうでしょう。
 物語の中で、新興宗教の教祖と、天吾の父親が出てきます。

 自信が教祖となっている宗教。その神秘性に自らが取り込まれ、身体が動かなくなっている教祖。
 すっかり惚けている父親。

「システム」を作っている側もいろいろなものを絡め取られているのです。

 村上春樹は、この「人間」と「システム」の関係についてこんな風に言っています。

私たちは皆、多かれ少なかれ、卵なのです。私たちはそれぞれ、壊れやすい殻の中に入った個性的でかけがえのない心を持っているのです。わたしもそうですし、皆さんもそうなのです。

 そして、私たちは皆、程度の差こそあれ、高く、堅固な壁に直面しています。その壁の名前は「システム」です。「システム」は私たちを守る存在と思われていますが、時に自己増殖し、私たちを殺し、さらに私たちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させ始めるのです。

 そして、「1Q84」は、「壁」に立ち向かっていく「卵」の話です。
 
 ハリウッド映画や日本のロールプレイングゲームのように、「壁」は「私が悪の大王だ」などとこれ見よがしに姿を現してくれるわけではありません。
 さらにやっかいなことに、自分自身もその「壁」の一部だったりするわけです。

 壁にぶつかり、割れてしまう卵。
 壁と自身の距離感を明確にし、しっかり生活をしている卵。

 そんな魅力的な登場人物のなか、主人公の二人は、幼少の頃に失った感覚が心の奥に残っていることにはっきり気付きます。
 そして、その幼少の頃の思い出を「1Q84年」現在に改めて現実化しようと動き出します。

 村上春樹がスペインの雑誌のインタビューの中で、こんなことを言っていました。
「ただひとついえるのは、不思議なことですが、危機が生じ始めると、私の作品が評価されはじめるということです。
 バブル崩壊後の日本。911後のアメリカ。共産主義崩壊後のロシア。統一後のドイツ。」

 スペインでも大規模な列車事故のあと、読者数がすごく増えたようです。

 まさに、「1Q84」に代表されるように、村上春樹は、こういう人々がうっすらと感じている不安感みたいなものを、ちょっと違った現実感の中で、我々が住んでいる世界よりももうちょっと見えやすくしてくれるのです。

 そして、登場人物たちは、その不安感に対して、迷いながら、対応をしていきます。
「俺があいつらをぶっ壊す!」と明確に行くのではなく、迷いながら、進んでいく様が非常に大きな共感を呼ぶのだと思います。

「1Q84」の二人の登場人物も、次第に自分の目指す場所を明確にしながら、進んでいきます。
 そして、Book2では、二人は異なる結果にたどり着きます。
 さあ、Book3では、どのようにあゆみを進めていくのでしょうか?

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
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