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 先日、伊豆のシャボテン公園に行ってきました。
 何のためかというと、映画「紀子の食卓」のロケ地を見るためです。

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 この映画は、「家庭」というモノに疑問符を投げかける映画です。

 仲むつまじく暮らしていると思われる4人の家庭。
 しかし、主人公の長女・紀子は、こんな家族からも、こんな家からも逃げ出したいと日夜考えています。

 必死に幸せな家庭を作ろうとしている父。
 家庭こそが自分の人生そのものだと感じているであろう母。
 逃げ出したい姉。
 無関心な妹。

 こんな家族の関係が如実に表れているのが、劇中でこの家庭が伊豆のシャボテン公園で撮ったこの写真。
 
noriko.jpg

 何ともいえない、ムリとか虚構が渦巻いている写真。
 背後にある、日本にはなさそうな丸っこい巨大なサボテンがその感覚を増幅します。
 温室の中の、カラカラに乾いた土に育つ、中に水を大量に蓄えて、それを針で必死に守っているサボテン。

 ちなみに、この映画は冬の映画ですが、夏にいくと暑くて死にそうになります。

 物語は、ぬぼーっとした長身の、どう見ても冴えないOLにしか見えない吹石一恵が演じる女子高生・紀子の独白で進んでいきます。

 家庭には飽き飽きし、それを紛らわすために学校では無理矢理忙しく活動し、その空しさを抱えながらハマったのが、廃墟.comという自殺サイト。

 そして、ある日、家が停電した時に、東京に飛び出し、廃墟.comの首謀者と会い、彼女の元で仕事を始めます。

 レンタル家族という仕事。

 この廃墟.comの首謀者の経歴もすごいのですが、彼女を演じるつぐみという人の眼力が凄い。人の心を掴んで離さない、しかし社会に対して無関心なあの眼。

 そんな彼女の元で、有料の虚構の家族として、身寄りのないおばあちゃんや、ひとり暮らしの男の元に行き、幸せな家庭を演じる仕事。ビジネスとして成功するかはともかく、今の日本に対する皮肉として、この上ない仕事です。


 やがて、妹のユカも平和な家庭から飛び出し、父と母が命がけで作り上げてきた平和な家庭という虚構は、もろくも崩れ落ちます。

 それでも何も出来ない父親。
 精神を病む母親。

 母親が必死になって行う作業は、冒頭の写真を絵にすることです。
 写真では不機嫌と無関心の二人の姉妹を、「幸せな家庭」の笑顔に描き変える作業。
 この夫婦が、ここ数年必死に行ってきた作業そのものです。

 日本の法制度は、「家族」に非常に優しく出来ています。
 専業主婦に関しては、過剰とも言える優遇がなされており、配偶者の税金も大きく控除され、年金・社会保険も払う必要がありません。
 最近は子供に関して手厚くする傾向にあり、子供手当なんていう無謀なモノが実行され早くも終焉を迎えそうになっています。

 また、日本のマスコミも、(韓流などよりもずっと)「家族」推しを続けており、例えば家庭用洗剤のCMは必ず、一軒家の庭で「父・母・子供」が楽しそうに洗濯物を干している画像が入ります。

 当然、教育もそのような傾向があり、成長するにつれ「家族とは、かけがえもなく大切なモノ」という意識がすり込まれるわけです。(社畜にはその後、「仕事はもっと大事」という洗脳がなされる)

 この映画では、「我が命尽きようとも、家庭は守るべきモノ」と洗脳された母親がまず真っ先に精神崩壊します。
 そして、家庭より大切な「仕事」を持っていた社畜はかろうじて崩壊を免れていましたが、その後の展開により決定的に崩壊し、「仕事」も「人生そのもの」も捨て、「家庭」探しの旅に出ます。

(日本に限らず)世の中の多くの映画やドラマ、物語は、「家庭」の楽しさ、絆の素晴らしさを説く事が多いです。

 確かに「家庭」は多くの人に幸せを運んできてくれる素晴らしいものですが、その幸せさを過剰に期待させ、その大切さを過剰に浸透させることによって悲劇は起こります。

「家庭」が上手くいかなくなったときの罪悪感、「家庭」がなくなった時の虚無感。

「家庭」とは人に生きる意味を教えてくれる大切なモノかもしれませんが、同時に生きている意味を全否定する諸刃の剣となる場合もあるわけです。

 その、諸刃の剣で傷つけられた人々が沢山出てくるのがこの映画なわけです。

 家族の存在に空しさを感じた姉。
 崩壊していく家族に歯止めがかけられなかった父。
 家族と共に自身が崩壊した母。
 そもそも、家族というモノが存在しなかった首謀者。

 そして、この映画で最も素晴らしかったのが、妹・ユカを演じた吉高由里子。
 ブレイク前、デビュー作の彼女が醸し出す存在感。

 舌足らずな台詞と、クールな眼が、この物語の不気味さと、その原因をクールに見透かす様子と重なり、いつのまにか物語の中心になっています。

 彼女が到達した最終地点。
 そこは、「家族」という虚構の虚構の最終地点の様な気がするのですが、彼女が一体どこにたどり着いたのかは、私にはまだよく分かっていません。

「家庭」というモノを客観的に見直したい人にはお勧めの映画ですが、既にかけがえのない「家庭」を持っている人は近づかない方がいい映画かもしれません。
 
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