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新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書
(2009/09/10)
西寺 郷太

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 先日亡くなった、キングオブポップことMJ(マイケルジャクソン)

 彼に対し、生前からはち切れんばかりの愛と知識で熱弁を振るっていた男がいました。
 西寺郷太

 MJと小沢一郎の人生の岐路が同じだったことから紡ぎ出した「マイケルジャクソン、小沢一郎同一人物説」や、
 MJとマドンナとプリンスが同級生であることから紡ぎ出した「花の(19)58トリオ」
 MJを中心に創られた"We are the world"参加者が、この後レコードセールス的に次々と下降線をたどっていくことあら紡ぎ出した「We are the worldの呪い」

 彼の自説の着想のおもしろさと、それにまつわる知識の深さ、そしてMJをはじめとするアーティストたちへの愛は、浅草キッドの水道橋博士をして「高座の落語のような名人芸だ」と言わしめたほどです。

 そんな彼が、MJの死後、必死で書き上げ緊急出版したのがこの、「新しいマイケルジャクソンの教科書」です。

 正直、タイトルはいかがなものかと思うのですが、内容は、期待以上のものでした。
「着想」の部分を削り、淡々と史実を語りながら、所々で愛を感じさせる。
 そんな素晴らしい文章です。

 私の中では、「世界一のスター」かつ「世界一の変態」というイメージがついているMJ。
 おそらく、世界中の多くの人の中でもこのイメージは色濃いものだと思います。

 しかし、膨大な情報から丹念に拾い上げてきた事実を見ていくと、それほど単純でないことが分かります。

 ジャクソン5時代の、父親の強権や家族とのビジネス的な不和
 世界一のスターになった後に訪れた、彼自身の慢心と人間不信
 詐欺師にだまされただけでなく、無罪判決が出た後もマスコミに叩かれ続ける不遇

 彼自身に、とてつもない才能と運があったことと、
 彼自身が、とてつもない富と金を創りだしてしまったこと

 これが、一人の人間の人生を波瀾万丈なものにしていったのです。
 それは、ロケットエンジンを積んでしまった軽自動車のように、操縦者のコントロールの外で暴れ回る車と、必死にハンドルを握る操縦者のようでした。

 中でも、恐ろしいのが、マスコミと大衆。

 2億枚以上CDを売り、「King of Pop」と崇拝されているときに、マスコミは彼の力を金に換え、大衆はそれを享受しました。
 しかし、その裏では嫉妬や憎悪のパワーもまた溜っていました。

 そして、ある時、マスコミは手のひらを返して、その嫉妬や憎悪の換金をはじめ、やはり大衆はそれを享受するのです。

「もちあげて、落とす」
 日本の芸能界でも、息をするように行われているこの動作を、世界で一番振れ幅を大きく、巨大な力を持ってぶち当てられた男の人生。

 途方もない、悲劇の話かも知れません。

 しかし、この本の素晴らしいところは、作者が、その異常なまでの愛情をもってしてマイケルを語っているため、悲劇の裏にも誰かに支えられているマイケルの姿が見えることです。
 そして、マイケルの死後のエピソードから、彼が一人ではなかった、救われていたということが分かり、読者も、そして何より作者である西寺郷太が心から安堵していることが伝わってくることです。

「歌詞の意味がわからんから、洋楽は聴かない」という理不尽な私ですが、読了後MJの遺した曲をiPodにいれはじめました。

新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書
(2009/09/10)
西寺 郷太

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バッド(紙ジャケット仕様)バッド(紙ジャケット仕様)
(2009/07/08)
マイケル・ジャクソンクインシー・ジョーンズ

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ブラジル 巨大経済の真実ブラジル 巨大経済の真実
(2008/06)
鈴木 孝憲

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「世界一周してきて、どこが一番よかったですか?」
 と、聞かれて必ず答えるのが、
キューバと、ブラジル。」

 そんなブラジルで、念願のオリンピック開催が決まり、世界の注目を集め始めました。
 ブラジル編でも書きましたが、ブラジルは南米では圧倒的な超大国で、中心的存在です。
 一億人以上の人口と、超広大な土地と、莫大な農場と、無尽蔵の鉱物資源を持つ国。
 南米の経済は、ブラジル次第でどっちにも転ぶという状況です。

 BRICsのRICは全て元社会主義国で、政治面から経済発展をしてこなかった(そして、今もそれはリスクとして残っている)わけですが、ブラジルはそんなことはありません。

 そんなブラジルが経済発展が発展してこなかった理由。それが、経済が破綻していたことです。

 古くは、1950年代。
 草原のど真ん中に首都をぶっ建てるなどという無茶をやってのけたために、税金が全く足りなくなり、大借金を負ったのが始まり。
googleで、「ブラジリア」「設立」って検索したら、自分のblogが一番上に出てきてびっくり)

 それ以来、国家経営破綻→貨幣の単位が変わる→紙幣が紙切れに
 を繰り返してきたでたらめな経済。

 1942年。ブラジルの通貨は「コント」という単位で、1コントで車が一台くらい買えたそうです。つまり、1コント150万円くらいかな。

 それが、クルゼイロ→クルゼイロ・ノーボ→クルザーロ→クルザード・ノーボ→クルゼイロ→レアルと、50年で6回も通貨が変わり、そのたびに無茶苦茶なデノミを繰り返してきたため、そのすべてを換算すると、

1レアル(50円)=360.000.000.000.000.000(36京)コントだそうです。

 なにせ、80-90年代のインフレでは、毎年のインフレ率が1000%-3000%。
 毎年物の値段が10-30倍に変わっちゃう。。
 はっきり言って、貯金するというのが自爆行為。企業も、資金計画なんて立てられません。
 もう、強制的にその日暮らしするしかない。酷い世界です。

 ちなみに、ブラジルでバイオエタノールが発展したのは、通貨が日々暴落していくので、石油が買えなくなる可能性が常にあったため、仕方がなく開発してたのです。
 同様の理由で、他の国が掘ろうともしなかった海底油田の採掘技術もブラジルがNo1です。

 そんな経済破綻の原因が「国家の税金の無駄遣い」だったわけで、日本も他人事ではないのですが。。。

 そのブラジルの経済の混乱を止めたのが、現在使われている「レアル」という通貨です。
 そして、一歩歩くたびに床が崩れ落ちるような状況を脱し、足下が固まってきたため、上記のようなブラジルの優れた点が生かされるときが来たわけです。

 バイオエタノールと海底油田がエネルギーを生み、
 巨大なジャングルが酸素を生み、温暖化ガス吸収し(ついでに排出権取引で外貨を呼び)
 広大な農地が食料を生み
 無尽蔵の鉱山が工業製品を生み
 巨大な人口が、労働力と消費を生む

 オリンピックの演説をしたルーラ大統領は、オバマがうらやむほどの強力な支持率を誇り、国民は、明るい未来に意気揚々としています。

 しかし、問題が全くないわけではありません。

 ルーラ政権は、たくさんの汚職スキャンダルを抱えており、
 アホな政府は途上国で最も高く、世界で一番複雑な税を企業に課しており、
 銀行は、異常な高金利と高手数料をとって偉そうにしており、
 公務員の年金が民間の7倍と異常に高く、
 道路や港がうんこ
 治安が悲惨

 などなど、問題も山積なわけです。

 とはいえ、国民は明るく、希望に満ちあふれているとても気持ちがいい国であることは確か。
 私にとって、オリンピックがリオに決まったことは、東京に決まるより喜びが大きかったです。

 私が、絶対にもう一度行きたい国。
 そして、住んで働きたい国。ブラジル。

 経済に興味がある人は、是非勉強しておくこと、そして一度行ってみることをお勧めします。
 
ブラジル 巨大経済の真実ブラジル 巨大経済の真実
(2008/06)
鈴木 孝憲

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こんにちは。
 いつもお越しいただきありがとうございます。
 
 この書評blog、書く対象を選ぶのも実際に書くのも結構大変で、週2更新はきついだろうなーと、考えていました。
 しかし、私は結構前から書評文書を書いてきてるので、時々それを加筆訂正して再放送することで、お茶を濁させていただきます。

 と、いうわけで、今回は、2005年9月に書いた、「村上龍(ドラゴン)の世界」です。
 村上龍の著作数作および、村上龍の世界観について話をしています。これを書いた4年後、村上龍が言ってたような世界になってますね・・・。

前編は、書評ってより、本の紹介になってます。
 では、どぞー。


「必ず新しい階級社会が生まれる。
努力しなかった人、訓練を何もうけていない人、技術が何もない人、コネクションが何もない人、醜い人、才能がない人、頭が悪い人、そういう人たちは最低の人生を生きるようになるだろう。
恋愛が出来るのも限られた人だけになるはずだ。
わたしは、それがしょうがないことだと思っている。」
村上龍 誰にでもできる恋愛 より

この文章は、彼がここ数年間言い続けている、ドラゴニズム(龍イズム・私の造語)のひとつの要素を表す文章です。

ドラゴニズムが、一番に提唱しているのは「自立」です。

つまり、人間はそれぞれ個人個人が、一人で生きていける力を持たねばならない。ということ。
それは、経済的にも、精神的にも。

彼の最近の小説も、多くがこの「自立」をテーマにしています。

■愛と幻想のファシズム
愛と幻想のファシズム〈上〉 (講談社文庫)愛と幻想のファシズム〈上〉 (講談社文庫)
(1990/08)
村上 龍

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愛と幻想のファシズム〈下〉 (講談社文庫)愛と幻想のファシズム〈下〉 (講談社文庫)
(1990/08)
村上 龍

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「狩り」を行うことにより、生物として自立した(自分で自分の餌を狩ることができる)主人公、鈴原冬至が、独裁政党を作り上げ、実質世界を支配している企業連合から独立していくお話。
冬至に依存している剣介が、狂気に陥るのが印象的。
ちなみに、エヴァンゲリオンのなかにトウジとケンスケという人が出てくるが、精神的に自立しているトウジは非常に辛い運命を背負うことになり、これといった依存も自立もないケンスケは平和に時を過ごしている。

■希望の国のエクソダス
希望の国のエクソダス (文春文庫)希望の国のエクソダス (文春文庫)
(2002/05)
村上 龍

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教師に反乱を起こした中学生が、インターネットを使った商売で経済的に自立し、やがて、独自通貨まで作り上げ、国家からも独立していくお話。
この中で、中学生たちは「リーダー」というものを作らず、全てフラットな形で組織を作っている。つまり、彼らの組織の中に、他の人に依存している人間を作ることを許していないのである。
60年代の安保闘争やぼくらの7日間戦争と大きく違うのは、これらが明確なビジョンを持たずに、いたずらに独立だけ求めているのに対して、この中学生たちは、独立宣言の後、どうやって自分たちだけで生きていくかのビジョンを持ち、それを実行に移したと言うこと。

■最後の家族
最後の家族 (幻冬舎文庫)最後の家族 (幻冬舎文庫)
(2003/04)
村上 龍

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親父はリストラ(配置転換ではなくファイヤーed)、息子は引き籠もり(ヒッキー)という家族。この家族の一員がそれぞれに自立していくことにより、それぞれが復活していくお話。
リストラされるサラリーマンには会社からの自立、専業主婦には配偶者からの自立、子供たちには親からの自立をそれぞれ促している。
それぞれが自立しているからこそ、それぞれが負い目なくつき合っていくことができるのである。


日刊ゲンダイのように、闇雲に「だめぽ!だめぽ!」と騒ぐのではなく、どこの、何がだめなのかを、小説の中で浮き彫りにし、登場人物にそれに対する解決策を必死に探らせることにより、読者に未来への指針を与えようとする小説たちです。

この姿勢はその後形を変え、「13歳のハローワーク」や「JMM『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』」などにつながっていくわけです。

 彼なりに未来の日本に対して贈れるモノは何かと考えて作った本。
 それが、この「13歳のハローワーク」
13歳のハローワーク13歳のハローワーク
(2003/12/02)
村上 龍

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この本は、「大きくなったらなんになる?」と言われて「公務員」などと答える小中学生に向けた本です。
なんでこんなことを答えるようになったかを考えると、大人も子供も世の中にどんな職業があるか知らないからではないかという仮説にたどりつきます。

絵が大好きな小学生。彼も、それなりの歳になればいやがおうにも画家や漫画家への道は限りなく狭く厳しいということを学習してしまいます。
そのリスクを考えると、いっぱい勉強してローリスクの公務員になった方が。。などと考えてしまうのも自然だと考えられます。
親も、「一流大学→一流企業」の物差ししか持っていなければ、絵に特化した教育を与えた子供が大人になってどうなるかを想像できず、不安になり、一生懸命止める方向に動いてしまいます。

しかし、「絵が好き」な人は、画家や漫画家になる以外も、「編集者」や「グラフィックデザイナー」「コーディネーター」や「イラストレーター」などの職業があるとわかったらどうでしょう?

自分の好きな絵やデザインをもっと勉強する気になるでしょう。
親も、ある程度の見通しを持って、そのために美大に行く、留学してデザインを学ばせるなどの投資を選択肢のひとつとして考えられるでしょう。

そんな風に、新しい知識を人が身につけることよって、仕事の選択肢を増やす。
結果的に、自分のやりたいことを仕事にする人を増やし、仕事を楽しむ人を増やす。

そんな意図のもと作られてるのかなと思います。
純粋に、職業図鑑として読んでも楽しいですが。

村上龍の世界 (下)に続く。
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と、いうわけで、前回に引き続き2005年9月に書いた、「村上龍(ドラゴン)の世界」をお楽しみください。
後編の方が、今のスタイルに近いですね。


彼のいいところは、「昔はよかった」という言葉を徹底的に嫌っていること。

「昔は、そんなもん、拳で殴り合って分かり合ったもんよ」などと言う言葉に対して、

「当時はほかにやらなくては生きていけないことがたくさんあったが、今は違う。考える時間がたくさんある。お互いがきちんと納得することが必須になってしまったのだ」と、一刀両断。

「昔がよかったというのは、「過去のことは楽しいこと中心に記憶する」という人間の特性が現れているだけ。昔は、ワールドカップもみれなかったし、海外旅行も行けなかった。全てにおいて今の方が豊かになったことは明らかだ」
と、いったように、過去の自分たちを肯定して、今の人間を批判するという考え方を否定している。

今は昔よりずっとよくなった。これからもよくなるであろう、という希望をもって、現在の問題点を探っている。

私が読みとった範囲での問題点は以下のようなものです。

「日本は高度に組織化されたために、全員が意志を持って働かなくても、一部全く働かなくても、全員が生きていくことが可能になった。

しかし、全く働かなくてもいい人間も、自分が働かないことには引け目を感じている。
だが、人とふれあうという最低限必要な訓練すら積んでいないので、何も行動を起こせない。このような場所で悩んでいる人間がたくさんいる。

人間の欲求は、衣食住の次に、「他者に喜ばれる」「他者から尊敬される」というものがある。彼らはこれを全く満たせないでいる。

また、経済が停滞する中で、「意志を持って働いていない人」を養っていく体力が組織に亡くなっている。これによって、今までの組織の中のルールの中でしか訓練されていなかった人が、ルール無用の世界にほおり出され、途方に暮れいている。

ボクシングの訓練しかしてない人が、何でもありどころか、武器もありの世界にほおり出されたようなもので、高度なボクシング技術がある人はともかく、中途半端な技術しか持っていないものは無力化している。

このように、高度な社会の中で守られ、訓練を受けていない人たちの負い目と、ソフトに守られていた人たちが、守りの中からはずされた不安、無力感、この2つが顕著化しているのが現在である。

ただし、これは、社会が成長しているから起こっている成長痛であり、時代が悪くなっているわけではない。
さらなる成長のためには、これを乗り越えねばならない。
そして、乗り越えるためのキーワードが、「自立」である。

そして、依存関係が成り立っている組織から、それぞれが自立し、依存関係が存在しないコミュニティを作っていくべきである。

ってのが、ドラゴニズムではないかと私は思っています。
的を得てると思うし、何より、前向き。非常に好感が持てます。


また、中田英との対談本「文体とパスの精度」の中では、お互いプロの世界で自立している者同士が、お互いを認め合って話をしているのが印象的です。
また、プロの作家、プロのスポーツプレイヤーという、マスを相手にしている商売にもかかわらず、インターネットというツールを使ってマスを相手にすることによって、マスコミから独立し、自分たちの望んでいるコミュニティを作りつつある、という姿が非常にカッコいいです。

中田も7年前はマスコミ相手に突っ張ってて馬鹿だと思っていたけど、この本を読んで考えが変わりました。
非常に、クレバー。

ここ数年で成長したのか、単に考えを外に出すルートがきちんと出来ただけなのかはわからないけど。

ちなみに、村上龍も最初はドラッグ&SM作家。初期の作品は、かなりエグイです。「限りなく透明に近いブルー」とか「トパーズ」とか。

なお、前編文章の中で、ちゃんと本を見て引用したのは、最初の「誰にでもできる・・」の文章のみです。
あとは、私のつたない記憶力のたまものですのでご了承を。(←依存)

文体とパスの精度 (集英社文庫)文体とパスの精度 (集英社文庫)
(2003/04)
村上 龍中田 英寿

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限りなく透明に近いブルー (講談社文庫 む 3-1)限りなく透明に近いブルー (講談社文庫 む 3-1)
(1978/12)
村上 龍

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トパーズ (角川文庫)トパーズ (角川文庫)
(1991/11)
村上 龍

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日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
(2008/03/21)
坂本 光司

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 一昔前、「会社な誰のモノか?」なんて議論がありました。

 株主のモノ。社長のモノ。従業員のモノ。お客様のモノ。

 株主が出した資本を使って利益を出して配当で還元するためのモノ
 経営者の夢を叶えるためのモノ
 従業員が楽しく自己実現するためのモノ
 お客様の生活をよくするためのモノ

 どれも正解のような気もしますが、ひとつ確かなことは、
 売り上げを上げて、コストを下げて、たくさんの利益を上げれば誰も文句は言わないってことです。

 お客さんに自社の商品を提案する際も、お客さんがしてくる質問の本質は
「それで、うちはいくら儲かるの?」

 自社で企画を提案する際も、上司がチェックするのは、
「いくらかかって、いくらコストダウンできるの?」

 売上-コスト=利益

 この方程式は、会社勤めが長くなるほど、絶対的なモノになってきます。

 しかし、本書には、この方程式を破った経営をしている会社がたくさん載っています。
 例えば、日本理化学工業。
 ここは、黒板に書くために使う、チョークを作っている会社です。

 ある日、この会社に養護施設の先生が訪問してきました。
「知的障害者の卒業生を、この会社で雇って欲しい」

 最初、社長はこれを断ります。
 知的障害者の人を受け入れても、その人を養っていく自身がないから。

 しかし、何度も何度も訪れて、
「彼女らに、働く幸せを感じて欲しいのです」
 と訴える、先生の熱意に折れて、一週間だけ彼女らを受け入れて、職業体験させてあげることにしました。

 毎日、7時に来て始まるのを待っている彼女ら。
 休憩時間も忘れて、一心不乱に作業をする彼女ら。
 なによりも、本当に幸せそうな顔をして働く彼女ら。

 そんな姿を見た社員が、社長に訴えます。

「どうか彼女らを、4月から正社員として雇ってあげてください。
 彼女らにできないことがあれば、私たちがカバーしますから。」

 以来、この会社は、障害者を採用し続けます。
 設備投資は、生産量を増やすことよりも、障害者が働けるようにすることを優先して行われます。

 もちろん、ボランティアでやっているわけではないので、しっかり利益も出ています。
 しかし、その利益の源泉は、多くの企業が目標としている「作業の効率化」からではなく、「社員が、自分の会社に誇りを持っていること。」「仕事を楽しんで、幸せに思って行っていること」なのだとおもいます。

 そして、この会社に取材に訪れた筆者の人は、最後にとても素敵な光景に出くわします。
 これは、是非、この本を読んでみたください。

 そして、こんなふうに、「売上-コスト=利益」以外のモノを重要視している会社のエピソードを読んでいると、自分が今までしてきたこと、これからすべき事を改めて考えさせられます。

 日本でいちばん大切にしたい会社  
 この本の中には、人生で大切にしなくてはならないモノがたくさん入っています。

日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
(2008/03/21)
坂本 光司

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今回の再放送は、2005年11月のモノ。
 この年に亡くなった、あの人のお話です。
紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也
(2005/10/11)
『紙のプロレス』特別編集

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この本は、橋本真也のバカエピソードを関係者のインタビューを軸にまとめたモノです。

基本的にプロレスラーはバカが多いのですが、その中でも飛び抜けてバカなのがアントニオ猪木と橋本真也ではないでしょうか。
悪の横綱が猪木ならば、善の横綱が橋本。

まず、橋本のどこバカかというと、やることが小学生。
40を超えて、虫取り網でセミを捕まえたり、手製のモリで魚をとったり、空気銃でスズメを撃ち落として焼いて若手に食べさせたりする人間は、世界中探しても橋本くらいのモノです。

さらに、ひとつのことをはじめたら死ぬほど凝る。
いきなり豆腐を作ることに目覚め、美味しんぼ級の最高級食材をそろえて、豆作りを敢行する橋本。
出来た豆腐は、原価2万円。しかも、美味しくない。
その後、片づけは一切せずに、ウルトラマンのおもちゃで遊びはじめる橋本。
後始末は、もちろん、奥さんの仕事。。

新日本プロレスの道場の周りで朝から一心不乱にセミを捕まえる橋本。
その量は半端ではなく、ざっと200匹。
何のために・・・と思ったら、若手の一人がセミが嫌いという情報をキャッチした模様。
200匹のセミを、若手の部屋にリリースする橋本。
道場は、地獄絵図。。

思いもかけない馬鹿なことをはじめ、やり始めたら脇目もふらず、人の迷惑を考えず、やり終わったら後始末はしない。

新日本プロレスを退社して、自分の団体作って、それを死にものぐるいで大きくして、失速してぶっつぶして、さっさとあの世に行ってしまう。

近くにいたら大迷惑なんだけど、確かな足跡を残してくれた破壊王・橋本真也。
ホント、面白かったです。面白すぎです。ありがとう、破壊王。

なお、インタビューで
「ストレスだとか持病が原因だって行ってたけど、99%は運動不足が原因でしょ!
全然練習しないもん。試合前の練習なんて足上げるだけ。3秒。」
と言っていた、暴走王・小川直也だけは、ガチ。

 ちなみに、好評につき第二巻も出たのですが、一番の被害者である天山選手のコメントが秀逸です。

「俺、一度、新日本プロレスの道場から脱走したんですよ。
 夜に先輩に連れ出され、近くにいた猫をエアガンで撃たされたんです。
 猫は当たり所が悪くて死んじゃって、その猫を二人で河原に埋めに行ったんです。
 こんな恐ろしいところにいてはならないと思って逃げ出したんです。

 今、思い出したんですけど、あのときの先輩って、橋本さんだったんです。。」

 外野で観ている分には最高ですが、近くには絶対いて欲しくないタイプの人ですね。。。
  

紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也
(2005/10/11)
『紙のプロレス』特別編集

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紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也 爆勝証言集 (kamipro books)紙の破壊王 ぼくらが愛した橋本真也 爆勝証言集 (kamipro books)
(2007/07/11)
kamipro編集部

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もりぞおさんは、11/6に、新宿厚生年金会館で行われた、
「ジムロジャース来日公演」に行ってきました。

 ジムロジャースといえば、「冒険投資家」と呼ばれ、私が世界旅行をすることになった原因のひとつである、罪深い人。
 まさか、お目にかかれるとは。。。

 ってことで、この講演会の内容は近日中に公開しますが、その前に2007年7月に書いた彼の著書の書評をどうぞ。
 あ、調子に乗って、文末にちょっと講演会の内容も書いちゃった。

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)
(2006/01)
ジム ロジャーズ

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「冒険投資家」(英語でADVENTURE CAPITALIST)
この言葉に惹かれ、本を手に取り、

帯に書いてある、村上龍への言葉

「リュウ、人生は短い、
遠くまで行って世界を見よう」

に感動して読み始めたこの本。

私の欲しているモノがたくさん詰まっていました。

ジム・ロジャース。
NYで投資の鬼才として名をとどろかせ、37歳で一生分稼いだので引退。
その後、世界中を旅しながら、有望な国に投資をしている男。

ステキな人生です。

この本は、彼が3年間かけて、車で世界一周した時の旅行記です。
氷河を越え、砂漠を越え、軍隊と一緒に内戦を越え、第二次世界大戦以来誰も車で通ったことのない国境を越え・・・。

まさに、冒険家。

今回、彼が乗っている車は、下の表紙にあるような黄色い特注のベンツです。
この、ベンツであるという理由がまたイカします。

メルセデスは、世界のどんなところに行ってもディーラーがあり、修理が出来る。
なぜなら、世界中の貧困があるところにいく寄付金は、必ず地元の有力者のところに集まる。
そして、彼らは、食料よりもワクチンよりも先に、自分のためのメルセデスを買うからだ。

自分の持ち物には、実用性を求め、それに洒落と皮肉のスパイスをふりかける。

まさに、私がモノを選ぶ基準と一緒。

この本を読めば読むほど、私がやりたいと思っていることを実践しているような気がして、
自分の進むべき道が見えてくるような気がします。

冒険投資家である彼は、様々な国へ冒険に行き、その土地を眺め、将来を予想し、
明るい将来を見た時は、その国の証券会社に口座を開き株を買っています。

「戦争が終わったばかりの国に行くに限る」
と言い放つその様は、まさに、冒険投資家です。

2000-2003年に行われたこの紀行にも、たくさんの国に対する評価、感想が書いてあり、その着眼点の鋭さには感心させられます。

中国が伸びるというのは当然として、トルコに投資したこと、アルゼンチンから引き揚げたことなど、実績もしっかりと積み上げています。

さて、そんな彼が、我が国日本をどうみたのでしょうか。

数ページに渡って書かれている日本の部分を要約してみます。

> 日本は、素晴らしい観光の地であり、それにふさわしい豊かな伝統を持つ。
> この国の富は、目がくらむほどだ。

> 高速道路では、目的地まであと何時間かを電光掲示板が教えてくれ、
> 歩けば、目の不自由な人向けのでこぼこや音が出る信号が案内してくれる。

> しかし、日本は深刻な問題を持っている。
> 途方もない額の、借金である。

> 誰も走らない高速道路や、どこにも行くことが出来ない橋を造り、
> ばかげた値段の米や果物を維持するために農家に手厚い保護を図る

> 政治に影響のある、ごく少数の労働者の利益を守るために作られた借金。

> このことについて、日本人は気づき始めており、不安で取り乱している。
> 出生率は最低で、自殺率は最高。なりたい職業は公務員である。


まさに、その通りという内容ですね。
この内容から、彼は日本に投資するのでしょうか?

答えは、Yes.


> 市場は失望で溢れており、企業は割安である。
> 政府は利下げをし、金を刷ることで資金供給を増やす意志を決定した。
> 発行された金が、最初に向かうのが株式市場である。


冷静かつ、明確な判断ですね。


> 市場は底入れの兆しを見せている。
> 今後景気は回復するだろう。リバウンドというかもしれないが。
> これは、短期から中期の話である。10年20年という単位で投資をしたいとは思わない。

目もくらむような豊かさに感動しながらも、その豊かさの元が何かをキチンと究明し、
問題の本質をとらえながらも、その問題の深さを値踏みし、
現状を踏まえながら、豊かさと問題を天秤にかけて、投資の判断をする。
そして、その全ては、自らの知識と体験を元にしている。

冒険投資家は、伊達じゃない。


彼の言ったとおり、日経平均は2003年を底に今まで順調に上がっています。
さあ、これからどうなるのか。


> ほんの少しだが、変化が訪れる予感がある。
> 日本の有権者にさえ、肥大化し腐敗した大勢が全てを押しつぶそうとしていることが見え始めたのだ。


彼は、様々な国に対して、○と×を明確にしています。
×の国は、明確に切り捨てます。

韓国が、保護貿易をやめた時、厳しい国際競争に勝てるとは思えない
ナイジェリアに至っては、私はナイジェリアが国として生き残れるとは思えない。


日本はやばい状況にある。
でも、まだ取り返しがつくところにはいる。

その認識は共感できるし、出来たら、日本国民全員が共有すべき認識だと思う。


 と、いうわけで、ここまでが2007年の内容です。
 そして、2009年11月の講演会で日本についてこういっています。

「私は、日本株と日本円をUSドルよりはたくさん持っている。
 ただ、これを5年10年持っているかは分からない。人口が減っており、財政の状況は悲惨だからだ。
 5年間、日本に変化がなければ手放す。
 新政権は変化を起こす。その変化がよいものであっても、悪いものであってもチャンスはある。
 例えば、私は、彼らが日本人が子供をたくさん産むような政策をとると聞いているので、サンリオやタカラトミーの株を持ってる。」

「私は、日本人はこれから歩む道を、この3つから選ばねばならないと思っている。」
 1.子供をたくさん産む
 2.移民を受け入れる
 3.生活水準を落とす


 全く同感であると同時に、3を選んでしまいそうな気がする・・・。

 次回、彼が語った世界経済のお話を。

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)
(2006/01)
ジム ロジャーズ

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冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行 (日経ビジネス人文庫)冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行 (日経ビジネス人文庫)
(2004/03/02)
ジム・ロジャーズ

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 前回に続いてマイナー路線。kamiproこと紙のプロレスです。
kamipro No.141(エンターブレインムック)kamipro No.141(エンターブレインムック)
(2009/11/24)
不明

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 プロレスとタイトルが付いている雑誌ですが、プロレスの記事はハッスルが潰れそう特集くらいで、格闘技の話題がほとんどです。

 最大の特集は、ストライクフォースというアメリカの格闘技を、青木真也という日本のトップファイターの一人が観に行くというもの。

 日本の格闘技には、有名なPRIDEというものがあったのですが、UFCというアメリカの団体に買収され消えてなくなってしまいました。
 PRIDEは当時、世界で最も有名かつ最高峰の選手がそろう、格闘技のメジャーリーグだったのですが、あっさりアメリカの団体の軍門にくだってしまったのです。
 なんで、こんなことが起こってしまったのか。
 これは、アメリカと日本のエンターテイメント産業の成り立ちに大きな原因があります。
 そして、たぶん、日本のいろいろな産業の弱点になっているものです。
 ちょっとその構造を考えてみましょう。

 上記の記事の中にある青木真也という選手は、日本国内でしか試合をしていない選手。
 関節技の技術は世界屈指と言われている選手で、日本で一番大きな団体、DREAMライト級チャンピオンです。

 この、青木選手の顔を知っている日本人がどれくらいいるかはわかりませんが、彼がアメリカの格闘技の会場に行ったとき、周りはものすごい騒ぎになったそうです。

「エイオキだ!エイオキだ!」
 
 もちろん、格闘技の会場だから知っている人が多いわけですが、まだアメリカで一度も試合してない人間がこれだけ知られているというのが、アメリカのマニアのすごさです。

 以前、NY在住のアメリカ人の友人に「アメリカでは今、どんなことが流行ってるの?」と、聞いたところ、「NYに流行なんてないよ。みんなが自分が好きなことのマニアなんだから」と、言う答えが返ってきました。

 アメリカの格闘技の収益の一番の稼ぎ頭は、ケーブルテレビによるペイパービューです。
 アメリカでは、格闘技の試合を当日生中継で見るのに4000円ほど金を払わねばならないのですが、最大手のUFCという団体の試合は、場合によっては数十万件の申し込みがあります。
 それだけで収入は二桁億円となるわけで、莫大な収益の一部は選手に還元され、それを目指して、多くのスポーツエリートが格闘家としてアメリカを目指す。
 そうやって、競技としてのレベルがどんどん上がっていきます。

 そして、数千円の金を払って試合を見るようなマニアたちですから、そのレベルの高さを充分に理解しています。
 競技としてのレベルの高い試合を見ることで、よりいっそう競技にのめり込んでいく。払う金も増える。
 見事な正のスパイラルになります。

 翻って、日本の格闘技はどうでしょう?
 一番の稼ぎ頭は、地上波テレビの放映権料です。ゴールデンタイムの放送なら数億円が動くと言われています。
 
 それ故に、試合の出場選手の選定や演出にはテレビ局が大きく口を出してきます。
 解説席に頭の悪そうな、何ひとつまともなことをしゃべらないアイドルが置いてあったり、格闘家としてのスキルは低いが人気はあるので毎回試合に出てくるような選手がいるのはそのためです。

 テレビ局は、視聴率がとれればそれでいいのです。

 それ故に、競技としてのレベルはだんだんと下がっていき、格闘家を目指す選手も減っています。
 魔裟斗のような、格闘家としてのスキルもテレビ的な人気もダントツの選手がいるうちはいいのですが、今後、彼のような選手が出てくるか、非常に不安なところです。

 さて、アメリカと日本の最大の違い。
 それは、ファンです。

 3億人以上の人口がおり、それぞれがそれぞれの嗜好を持っているアメリカ人。
 そして、自分が好きなものに対してはしっかり金を払うというマインドもあります。(レストランのチップ制度などとも関係あるかもしれません)

 1億人以上の人口がいるのですが、基本的に「流行っているもの」を追いかける人が多い日本人。受動的な趣味なので、あまり金も使ってくれません。
 格闘技の消費者の多くの動機、「テレビでやってたから見た」「なんかみんなが見てるから見た」というもの。
 
 競技レベルを上げれば収益が上がるというアメリカと、
 素人受けするようにしないと収益が上がらないという日本という構造になるわけです。
 さらに、日本の放送はほとんどが地上波のため、視聴者から直接料金を取る方法が確立されていません。
 アメリカは、広すぎて電波が届かない地域が多いという理由でケーブルテレビが広がったのですが、一つの地域に複数のケーブルテレビ会社が入って競争をしたため、テレビを通じて受けられるサービスが多岐にわたっています。
 その中で、テレビを通じて課金する制度が整ったわけです。
 まるで、日本で携帯のコンテンツから課金するシステムがしっかり確立しているように。

 日本のテレビは、放送法により新しいテレビ局の参入はほぼ不可能です。(参入させないために、テレビ局から政治家に多額の献金が行われ、テレビ局にはたくさんの役人が天下りしています)

 それゆえに、はっきり言って根拠が怪しい視聴率というものだけを争った、いつまでも進歩がない番組作り。
 テレビを通じたエンターテイメントのレベルは悲惨な状況です。

 私は、年に数回しかテレビを見ないのですが、そのときいつも思うのが、「いつまでたっても進歩がないなあ・・」ってことです。

 ただ、このところやっと、そんな旧態依然としたテレビ業界の危機が始まりました。
 テレビは変わっていくのか。
 テレビは、日本人視聴者の体質を変えるような、魅力的なコンテンツを発信してくれるのか。
 テレビは、視聴者から効率的に料金を引き出し、コンテンツの提供者にその金をスムーズに回すことが出来るようになるのか。

 コンテンツの発信がインターネット中心になり、国境がなくなる時代はすぐ近くまで来ています。むしろ、すでに始まっています。
 日本のエンターテイメント業界は、一刻も早く変わらないと、また一つ日本から産業がなくなり、また日本が貧乏になっていくわけです。

 アメリカの格闘技の試合が有料でインターネット中継されるようなれば、たぶん私はそれを見るでしょう。
 でも、年に数回日本で格闘技イベントを観に行くもりぞおさんとしては、日本国内でレベルの高い格闘技が続いて欲しいのです。。。

kamipro No.141(エンターブレインムック)kamipro No.141(エンターブレインムック)
(2009/11/24)
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ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)
(2008/07)
上杉 隆

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 愛甲猛という選手をご存じでしょうか?
 その昔、ロッテにいた選手なのですが、当時のロッテは最下位街道まっしぐら。落合が三冠王をとること以外何のニュースもないような球団だったため、愛甲についても名前くらいしか知りませんでした。

 しかし、この男、とんでもない奴でした。

 プロ野球入団前。
 見事な不良であった彼は、野球の才能だけで横浜高校入学。
 一年生エースとして、夏の甲子園神奈川県大会の決勝まで行きます。
 しかし、決勝で敗れ、肘に怪我までした彼は自暴自棄になり、友達の家を泊まり歩き、シンナーやって警察に補導されます。

 県大会での活躍から、神奈川県警の一日所長をやることが決まっていたのですが、急遽中止に。危ないところでした。。

 この人の人生は、万事こんな感じです。

 2年生でも、決勝で敗れ、彼は心を入れ替えます。

「Y校に負けたことで悔しさを覚え、一層熱心に練習に打ち込んだ。
 1年間、タバコ以外は全て断った。

 高校生は、タバコ吸っちゃ駄目ですから!

 ちなみに、試合で打たれると、観客席から「これが足りないんじゃねえか?」と、シンナー入りのコーラの缶をカラカラさせる応援団がいたんだとか。。。

 そして、3年目見事甲子園出場。そして、決勝で荒木大輔と戦い、優勝!

「優勝パレードの後、人疲れしてしまい、遊びに出かけた。行った先はスナック。
(中略)
 スナックに来ていた社長のおごりで、堀之内のソープに行った。

 もう、朝日新聞が必死で作り上げている、甲子園の、明るくさわやかなイメージが根本から崩れます。

 さらに、ある女優との対談が設定され
「事務所の社長が「彼女どう?つきあってみない?」と言ってきた」
 と、いうわけで、さりげなく芸能界のドロドロしたとこまで暴露してます。

 また、このころモテモテだったのですが、特にレディースにモテたらしく、こんなエピソードも。

「おとなしいコは下駄箱にラブレターを入れるのが精一杯なのだが、不良は腕にカッターで俺の名を彫り「あたしと付き合いな」と正面から来る。

 不良の考えることは全然わかりません・・・。

 また、高校の野球部なんざクソ体育会系でいじめは常軌を逸しています。しかし、彼の場合、
「後輩をしごいても、いじめはしなかった。」そうです。

 寝ている間に後輩の顔に性器の絵を描いたり、後輩の性器に性器の絵を描いたり、偽のラブレターを後輩に出したり。。。かなりいじめに近いと思うんですけど。。。

 プロに入ってからも滅茶苦茶で、

一番ハマった賭博は、ポーカー賭博

「花札をやってたら、仲間の三人が注射を打ち、すっかり花札にならなくなった。
 翌日、球場で会ったとき、「明日もくるから!」と言って別れたがその後行方不明・・とおもったら、二年間刑務所に入っていた」

「ある日、観客の数を数えたら98人しかいなかった。」

「暴力団の構成員となった友達が金に困ってたので5万円貸してやったらお礼にせんべいらしき缶をくれた。その中の封筒には緑の葉っぱが入っていた。マリファナだった。
 返そうと思ったが携帯電話がない時代なので居場所がわからない。目にはいると試してみたくなるのが人情というものだ

「一度だけ(味方)投手に「ぶつけてくれ」と頼んだことがある。」

「ウマが合った歯医者がY氏である。彼がはまったのが野球賭博である。(このあと、野球賭博の正確なルールを記載)」

「(マクガイアがドーピングをしているのを知って)日本球界の「ドーピングパイオニア」を目指そうとしたのだ

 そんなもん目指さないでください・・・。

 さらに、フローレンスジョイナーの急死を見て、「死というリスクも考えた。しかし、俺には野球が第一義。太く短く生きるのも俺らしい。試してみなければわからないと言い聞かせた」

 と、ヤンキーらしい見事な決断力を見せます。ちなみに、この後成績は上がります。
 が、副作用によるアキレス腱の痛みで、打った後も走れなくなり、引退。

 引退後も、頭痛、不整脈が断続的に起こり、車の運転中に足の感覚がなくなるほど足がパンパンになり、胸が苦しくなり、心臓が痛むという事態に。

 ステロイド、恐るべし。

 その後、メジャーの試合にいったとき、新庄がこんなことを言ってたことを暴露。
こっちじゃ、ステロイドは流行ってなくて、グリーニー(興奮剤)ですよー

 だから、そういうことばらしちゃ駄目だから。。

 はい。本文切り取りとつっこみだけで終わってしまいました。
 この人、半端じゃありません。ヤンキー、コワ。
 ちなみに、ネタはこんなもんじゃないので、一読をおすすめします。
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1Q84 村上春樹
1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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※この文章には、「システム」とか「壁」とか訳のわからないキーワードが散らばってます。
 村上春樹的「システム」の意味がわからない人は、まず、前回の文章をお読みください。

1Q84の前に 村上春樹エルサレム賞受賞スピーチ
 
 あと、多少のネタバレは含みますが、核心には触れないようにしているので、読了前の人もご安心してお読みください。(完全に前提知識なしで読みたいってひとは、もうすでに読んでるだろうし・・・)


 1Q84。
 この物語は、1984年に生活をしていた女性が、いつの間にか違う時間の流れの世界に踏み込んでしまうお話です。
 その1984年に似て非なる世界を、「1Q84年」と名付けるところから来ています。

 しかし、「9」を「きゅう」と読むから「Q」と同じ発音なのは日本だけのはずなので、英語とか韓国語とか中国語に翻訳するときはどうするんでしょう?
 ま、たぶん注釈がはいるだけだから、どうでもいいですが。

 物語は、一章ごと交互に二人の主人公の視点で描かれます。
 
 青豆さんという女性と、天吾くんという男性。
 どっちもアラサーです。

 この二人を含めた多くの登場人物は、幼少の頃に「システム」によって心に傷を負っています。
 
 NHKの集金人である父親と一緒に集金に行かされるのが何よりもいやだった天吾。
 宗教の信者であった母親と一緒に布教にいかされるのが何よりもいやだった青豆。

 親戚中警察官ばかりでひどい虐待を受けてた女性。新興宗教のコミューン(自治区)のなかで宗教行事と虐待の中間のような状況に置かれていた女の子。

「システム」として強固に固まっている、「国家」と「宗教」によっていろいろなものを絡め取られた「卵」たち。
 これが、この「1Q84」に出てくる人物たちです。

 そのからめとられた様は、彼らの恋愛観に色濃く表れており、
 (射精のタイミング以外)なにひとつ干渉しない、年上の人妻」と週に一度の逢瀬を続ける天吾。
 時々、見ず知らずの、頭の毛が薄い中年の男を捜しに、六本木のバーに行き、一夜限りの関係を求める青豆
 と、かなり病んだ精神状態の二人が、病んでいるそぶりを見せず、むしろ非常に明確かつ論理的な思考を持っている人として、描かれているのです。

 日本国民としてNHKの受信料を支払うのが常識であるように、
 世界平和のために、共に神に祈りを捧げる人を一人でも増やすため、無償の活動をするのが常識であるように、
 妊娠中の女性が亡くなったとき、その亡骸は火葬することもなくガンジス川に流すのが常識であるように。
 仕事が時間内に終わらなかったら、残業代が出なくてもその仕事を終わらせなくてはならないのが常識であるように。

 世の中には、多種多様の「常識」という名の「システム」があります。
 その「システム」は、人々を幸せにしたり、苦しめたりしています。

 また、子供のころ「システム」によってゆがめられた彼らの感情は、二人の聡明さもあって、自分たちの中に世の中の大多数の人とはちがった「システム」を生み出しているのです。

 では、彼らが組み込まれていた「システム」を作った人たちはどうでしょう。
 物語の中で、新興宗教の教祖と、天吾の父親が出てきます。

 自信が教祖となっている宗教。その神秘性に自らが取り込まれ、身体が動かなくなっている教祖。
 すっかり惚けている父親。

「システム」を作っている側もいろいろなものを絡め取られているのです。

 村上春樹は、この「人間」と「システム」の関係についてこんな風に言っています。

私たちは皆、多かれ少なかれ、卵なのです。私たちはそれぞれ、壊れやすい殻の中に入った個性的でかけがえのない心を持っているのです。わたしもそうですし、皆さんもそうなのです。

 そして、私たちは皆、程度の差こそあれ、高く、堅固な壁に直面しています。その壁の名前は「システム」です。「システム」は私たちを守る存在と思われていますが、時に自己増殖し、私たちを殺し、さらに私たちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させ始めるのです。

 そして、「1Q84」は、「壁」に立ち向かっていく「卵」の話です。
 
 ハリウッド映画や日本のロールプレイングゲームのように、「壁」は「私が悪の大王だ」などとこれ見よがしに姿を現してくれるわけではありません。
 さらにやっかいなことに、自分自身もその「壁」の一部だったりするわけです。

 壁にぶつかり、割れてしまう卵。
 壁と自身の距離感を明確にし、しっかり生活をしている卵。

 そんな魅力的な登場人物のなか、主人公の二人は、幼少の頃に失った感覚が心の奥に残っていることにはっきり気付きます。
 そして、その幼少の頃の思い出を「1Q84年」現在に改めて現実化しようと動き出します。

 村上春樹がスペインの雑誌のインタビューの中で、こんなことを言っていました。
「ただひとついえるのは、不思議なことですが、危機が生じ始めると、私の作品が評価されはじめるということです。
 バブル崩壊後の日本。911後のアメリカ。共産主義崩壊後のロシア。統一後のドイツ。」

 スペインでも大規模な列車事故のあと、読者数がすごく増えたようです。

 まさに、「1Q84」に代表されるように、村上春樹は、こういう人々がうっすらと感じている不安感みたいなものを、ちょっと違った現実感の中で、我々が住んでいる世界よりももうちょっと見えやすくしてくれるのです。

 そして、登場人物たちは、その不安感に対して、迷いながら、対応をしていきます。
「俺があいつらをぶっ壊す!」と明確に行くのではなく、迷いながら、進んでいく様が非常に大きな共感を呼ぶのだと思います。

「1Q84」の二人の登場人物も、次第に自分の目指す場所を明確にしながら、進んでいきます。
 そして、Book2では、二人は異なる結果にたどり着きます。
 さあ、Book3では、どのようにあゆみを進めていくのでしょうか?

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
村上 春樹

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